イラリス 臨床成績

「効能又は効果」、「用法及び用量」、「禁忌を含む使用上の注意」、「効能又は効果に関連する使用上の注意」、 「用法及び用量に関連する使用上の注意」については添付文書をご参照ください。

海外臨床試験
②全身型若年性特発性関節炎(第Ⅲ相/G2301試験)<海外データ>15-16)

15)社内資料:全身型若年性特発性関節炎患者を対象とした海外第Ⅲ相臨床試験(G2301)(承認時評価資料)

16)Ruperto, N. et al.: N. Engl. J. Med. 367(25), 2396, 2012( 本論文の著者のうち2名はノバルティスの社員である。本研究にノバルティスは資金の提供を行った。)

(1)試験デザイン

目 的:
主要目的として以下を評価する。

  • パートⅠ(非盲検期):イラリスの投与により、25%以上の患者で治験実施計画書に従って経口ステロイド薬を減量できるかどうかを評価する。
  • パートⅡ(二重盲検期):イラリスの投与により、プラセボと比べ再燃までの期間を延長できるかどうかを評価する。

評価項目:
(1)有効性

1)主要評価項目:

  • パートⅠ; パートⅠの組入時に経口ステロイド薬を使用していた患者のうち、パートⅠ開始時からパートⅠc終了時までに、治験実施計画書*に従って経口ステロイド薬の減量を達成した患者の割合 
  • パートⅡ; 再燃までの期間

2)副次評価項目:

・パートⅠ;パートⅠc終了時に経口ステロイド薬を0.2mg/kg/日以下まで減量できた患者の割合
・パートⅠでAdapted ACR Pediatric 30/50/70/90/100を達成した患者の割合

(2)安全性

 

試験方法:
パートⅠ:非盲検、非対照、多施設共同試験
パートⅡ:ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同試験

 

対 象:
目標症例数 : パートⅠ 214例、パートⅡ 58例(各群29例)
評価例数 : パートⅠ 177例、パートⅡ 100例(各群50例)

  • 2歳以上20歳未満の男女
  • 治験組入時の2ヵ月以上前にILARの基準でSJIAと診断され、発症時の年齢が16歳未満
  • 治験組入時に、疾患活動性の基準(2関節以上の活動性関節炎、初回投与前1週間以内の発熱 ; 38℃超が1日以上、CRP 30mg/L超)をすべて満たす(これらの項目は、G2305試験からの組入患者には該当しない)

 

投与方法:
パートⅠでは、すべての患者に対しイラリス4mg/kgを4週毎に皮下投与した。パートⅡでは、イラリス4mg/kg又はプラセボを4週毎に皮下投与した。
*治験実施計画書に規定された経口ステロイド薬の減量の手順は以下のとおりである。

  •  Adapted ACR Pediatric 50を達成し発熱がない場合、経口ステロイド薬の減量を開始した。
  • 0.1mg/kg/日を超える経口プレドニゾン(又は等価量のステロイド薬)を使用している場合は0.05mg/kg/日に減量して1週間投与した。その後、0.05mg/kgの48時間ごとの投与に変更して2週間投与したのち、投与を中止した。

 

試験スケジュール:

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解析計画:
パートⅠの有効性についてはイラリスが1回以上投与されたすべての患者を対象とした。
安全性については、イラリスが1回以上投与され、かつ投与後に安全性が1回以上評価されたすべての患者を対象とした。25%以上の患者で経口ステロイド薬を減量できたかどうかを片側二項検定により検定した。
パートⅡについては、有効性はパートⅡにランダム化され、イラリス又はプラセボが1回以上投与されたすべての患者を対象とした。解析はITTの原則に従い、ランダム化された投与群に基づき実施した。安全性はパートⅡにランダム化され、イラリス又はプラセボが1回以上投与され、かつ投与後に安全性が1回以上評価されたすべての患者を対象とした。再燃までの期間は、カプランマイヤー法を用いてパートⅡ開始時を起点に再燃した患者の割合を推定し、Greenwood法を用いて再燃までの期間の中央値及びその95%信頼区間を算出した。

 

判定基準:国内臨床試験(第Ⅲ相/G1301試験)を参照

(2)患者背景

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(3)主要評価項目:パートⅠにおいて経口ステロイド薬を減量できた患者の割合

パートⅠの組入時に経口ステロイド薬を使用していた128例中、経口ステロイド薬を減量できた患者は57例(44.5%)であり、パートⅠの主要目的(25%以上の患者で経口ステロイド薬の減量が可能かどうか)が達成された(p<0.0001、90%信頼区間37.1~52.2 : 片側二項検定)。

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※1 経口ステロイド薬を減量できた患者:Adapted ACR Pediatric 30を維持し、かつ以下のいずれかに該当
 ・ パートⅠ開始時からパートⅠc終了時までに経口ステロイド薬を0.8mg/kg/日超から0.5mg/kg/日以下へ減量
 ・ 0.5mg/kg/日以上0.8mg/kg/日以下の場合、ベースラインからの減量が0.3mg/kg/日以上
 ・ ベースラインの投与量にかかわらず0.2mg/kg/日以下に減量
 ・ ベースラインの投与量が0.2mg/kg/日以下の場合、ベースラインからの減量
試験組入時に経口ステロイド薬を使用していたがパートⅠcに移行しなかった患者は、経口ステロイド薬を減量できなかった患者(減量せず)とみなした。
※2 25%以上の患者で経口ステロイド薬を減量できたかどうかを片側二項検定により検定した。
*有意水準は0.05(片側)。パートⅠcに移行した患者については統計学的仮説検定を実施しなかった。

(4)副次評価項目:パートⅠc終了時に経口ステロイド薬を0.2mg/kg/日以下まで減量できた患者の割合

パートⅠcの開始時に経口ステロイド薬を使用していた患者92例のうち、パートⅠc終了時に経口ステロイド薬を離脱できた患者は42例(45.7%)、経口ステロイド薬の用量が0mg/kg/日超0.2mg/kg/日以下であった患者は24例(26.1%)であった。

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※プレドニゾン以外の経口ステロイド薬を使用していた場合はプレドニゾン換算で算出した。

(5)副次評価項目:パートⅠでAdapted ACR Pediatric 30/50/70/90/100を達成した患者の割合

パートⅠ終了時におけるAdapted ACR Pediatric 30を達成した患者は175例中135例(77.1%)、Adapted ACR Pediatric 70を達成した患者は175例中113例(64.6%)、Adapted ACR Pediatric 100を達成した患者は175例中60例(34.3%)であった。

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(6)主要評価項目:パートⅡにおける再燃までの期間

カプランマイヤー法で推定した再燃までの期間の中央値は、イラリス群では推定されず、プラセボ群では236日(95%信頼区間141.0~449.0)であり、イラリスはプラセボに比べ再燃のリスクを64%減少させた(ハザード比0.36、95%信頼区間0.17~0.75、p=0.0032、層別Log-rank検定)。

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(7)安全性

パートⅠにおける副作用は177例中30例(16.9%)に認められた。器官別大分類(SOC)別で最も発現率が高かった副作用は「感染症および寄生虫症」(4.5%)であり、次いで「胃腸障害」、「臨床検査」(各3.4%)であった。
基本語(PT)別で3例以上にみられた副作用は、貪食細胞性組織球症4例(2.3%)、頭痛3例(1.7%)であった。

パートⅡにおけるイラリス群の副作用は、50例中13例(26.0%)に認められた。SOC別では「感染症および寄生虫症」(14.0%)が最も高かった。PT別で3例以上に認められた副作用は、上気道感染3例(6.0%)であった。

パートⅡにおけるプラセボ群の副作用は、50例中6例(12.0%)に認められた。SOC別では、「臨床検査」(6.0%)、「感染症および寄生虫症」(4.0%)であった。PT別で3例以上に認められた副作用はなかった。

パートⅠにおいて肺高血圧症による死亡が1例報告された。本症例は64日目に貪食細胞性組織球症と診断され、probable MASと判定、81日目にMASに合併して発現した肺高血圧症のため死亡した。

パートⅡでの死亡は報告されなかったが、イラリス群において試験中止2日後(イラリス最終投与から約1ヵ月後)に貪食細胞性組織球症の併発による死亡が報告された。本症例はprobable MASと判定された。

パートⅠにおける重篤な副作用は、貪食細胞性組織球症4例、発熱1例、肝炎、リンパ節膿瘍、C-反応性蛋白増加、凝固検査異常、肝酵素上昇、血小板数増加、血清フェリチン増加、白血球数増加、傾眠、間質性肺疾患、肺高血圧症(各1例)であった。

パートⅡにおけるイラリス群の重篤な副作用は、血小板数減少、白血球数減少、アラニン・アミノトランスフェラーゼ増加、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、ハプトグロビン減少(各1例、いずれも同一患者)、肝酵素上昇(1例)であった。プラセボ群の重篤な副作用は心停止、敗血症性ショック、敗血症、貪食細胞性組織球症(各1例、いずれも同一患者)であった。

投与中止に至った有害事象は、パートⅠにおいて5例(2.8%)であった。2例以上に認められた有害事象は、貪食細胞性組織球症(2例)であり、これら2例はMASとして報告された。パートⅡのイラリス群ではみられなかった。プラセボ群では6例(12.0%)が有害事象により投与を中止し、うち敗血症1例、貪食細胞性組織球症は重篤な有害事象として報告された。

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