エンレスト FAQ
製品FAQは医療に従事する先生方からよくご質問いただく内容をまとめたものです。記載している情報はあくまで参考情報としてお取り扱いいただき、医療上のご判断は医療従事者の裁量と責任のもとに行っていただきますようお願い致します。
製品のご使用にあたっては、最新の電子化された添付文書(電子添文)をご確認ください。製品に関してご不明な点がございましたら、弊社お問い合わせ窓口にお問い合わせください。
1.特定の背景を有する患者
腎機能障害患者または透析患者に投与する場合に注意することはありますか?
エンレストは腎機能障害のある患者や透析中の患者に対し禁忌ではありませんが、エンレストの血中濃度が上昇するおそれ等があり、適応症ごとに注意喚起をしています。
【慢性心不全】
慢性心不全患者に投与する場合は血圧、血清カリウム値及び腎機能等の患者の状態を十分に観察してください。1)
特に重度の腎機能障害のある患者には、投与の可否を慎重に判断してください。エンレストの血中濃度が上昇する恐れがあり、臨床試験で除外されています。2)
【高血圧症】
高血圧症患者に投与する場合は血清カリウム値及び腎機能等、患者の状態を十分に観察してください。3)
特に重度の腎機能障害のある患者には、投与の可否を慎重に判断してください。投与する場合は、低用量から開始することを考慮ください。4)
血液透析中の患者にも、投与の可否を慎重に判断してください。投与する場合は、低用量から開始し、増量する場合は徐々に行ってください。エンレストの血中濃度が上昇するおそれや、急激な血圧低下(失神及び意識消失を伴う)を起こすおそれがあり、臨床試験では除外されています。5)
(参考)
1) エンレスト電子添文 9.2.1
2) エンレスト電子添文 9.2.2
3) エンレスト電子添文 9.2.3
4) エンレスト電子添文 9.2.4
5) エンレスト電子添文 9.2.5
高齢者に投与する場合に注意することはありますか?
一般的に高齢者では過度な降圧に注意する必要があることから、適応症ごとに注意喚起をしています
【慢性心不全】
血圧、血清カリウム値及び腎機能等の患者の状態を十分に観察しながら投与してください。特に投与開始時及び増量時は患者の状態を観察しながら慎重に投与してください。一般に過度の降圧は脳梗塞等が起こるおそれがあり、好ましくないとされています。臨床試験において、高齢者では、低血圧、高カリウム血症、腎機能障害の発現が増加することが報告されています1)。
【高血圧症】
低用量から投与を開始するなど慎重に投与します。一般に過度の降圧は脳梗塞等が起こるおそれがあり、好ましくないとされています2) 。
(参考)
1) エンレスト電子添文 9.8.1
2) エンレスト電子添文 9.8.2
2.効能又は効果
エンレストの成人の慢性心不全に対する効能又は効果に記載されている、「慢性心不全の標準的な治療」とは何をさしますか?
成人の慢性心不全に対するエンレストの効能又は効果は、「慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。」です。
こちらの“慢性心不全の標準的な治療“に該当する治療として、国内外のガイドライン等で推奨されている治療全てを受けていることを求めているわけではありません。
但し、エンレストはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)から切り替えて使用することとされていることから1)、ACE阻害薬又はARBを使用していることは、エンレストの使用を開始するうえでの必須条件になります。
(参考)
1) エンレスト電子添文5.1
3.用法及び用量
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)が投与されている場合は、少なくともエンレスト投与開始36時間前にACE阻害薬を中止するのはなぜですか?
エンレストはACE阻害薬との併用により、相加的にブラジキニンの分解を抑制し、血管浮腫のリスクを増加させる可能性があります。そのため、ACE阻害薬が投与されている場合は、少なくともエンレスト投与開始36時間前に中止してください。
(参考)
エンレスト電子添文 10.1
エンレスト錠は半錠に分割して投与してもいいですか?
【エンレスト錠100mg】
エンレスト錠100mgは割線入りフィルムコーティング錠であり、割ることを想定した割線入り錠剤として承認されています1)。また、錠50mgと生物学的同等性が確認されており、錠50mgの代替として錠100mgを半錠にして投与することができます。
しかしながら、錠100mgの半錠分は50mgですが、1回50mg投与の高血圧症に対する薬物動態、有効性、及び安全性は確認されていません。投与にあたっては、規格により承認されている適応症が異なることにご留意ください。
【エンレスト錠50mg、200mg】
錠50mgまたは錠200mgは割線がなく、割ることを想定した錠剤ではないため、分割して投与することは推奨していません。また、錠50mgの半錠分は25mgとなり、1回25mg投与を含めた慢性心不全及び高血圧症に対する有効性、安全性、薬物動態は確立していません。
(参考)
エンレスト電子添文 3.2
用量調節が困難な小児心不全患者に対し、錠剤を粉砕または簡易懸濁法で投与してもいいですか?
エンレスト錠を粉砕、または簡易懸濁して服用した場合の有効性、安全性、薬物動態は確立していないため、弊社からは推奨していません。
用量調節が困難な小児心不全患者に対しては、錠剤を粉砕した懸濁液で投与してください。
懸濁液の調整方法は適正使用ガイドをご参考ください1)。
(参考)
1) RMP資材(医療従事者向け):エンレスト適正使用ガイド エンレストを適正にご使用いただくために(慢性心不全)
エンレスト粒状錠服用時に混ぜてはいけない食べ物や飲み物はありますか?
エンレスト粒状錠は少量の飲み込みやすい食べ物(服用補助ゼリーやクラッシュゼリー/飲用ゼリー、果物・野菜ペースト、ヨーグルトなど)に混ぜて服用してください。
飲み合わせの悪いものは特にありません。温かいものでは溶けて苦味が出てしまいます。
取り出した粒状錠をそのまま水で服用することも可能です。カプセル型容器のまま服用しないよう注意し、中身の粒状錠だけを服用してください1)。
(参考)
1) RMP資材(患者向け):エンレスト®錠 粒状錠小児用 はじめてガイド〔小児用〕(慢性心不全)
飲み忘れた場合はどうしたらよいですか?
飲み忘れた場合は、気がついた時に1回分を飲んでください。ただし、次の通常飲む時間が近い場合は、忘れた分は飲まないで1回分を飛ばしてください。2回分を一度に飲んではいけません1)。
(参考)
1) エンレスト患者向医薬品ガイド
アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)と併用してもいいですか?
ARBとは併用禁忌ではなく併用注意のため、患者の状態に配慮の上、最終的には医師のご判断で決定してください。
ただし、ARBとの併用によりレニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系阻害作用が増強される可能性があり、腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧を起こすおそれがあるため、これらの薬剤と併用すべきではありません1)。
また、成人の慢性心不全で使用する場合、ACE阻害薬又はARBから切り替えることとしています2)。
(参考)
1) エンレスト電子添文 10.2
2) エンレスト電子添文 5.1
4.安全性
粒状錠小児用のカプセル型容器を誤飲したときのリスクはありますか? 誤飲した場合の対応方法を教えてください。
投与対象となる小児は、カプセル型容器を飲み込めずに気道異物となって窒息の危険があります。
なお、エンレスト粒状錠に用いるカプセル型容器の材質は医薬品添加物としても使用されているヒプロメロース、酸化チタン、黄色三二酸化鉄(31.25mgのみ)です1)。
患児がカプセル型容器を飲み込んだと思われた場合は経過を観察し、適宜対症療法を行ってください。
なお、臨床試験において誤飲した事例は特に報告されていません。
(参考)
1) エンレストインタビューフォーム IV-10(4)
エンレスト投与中に低血圧が発現した場合の対応を教えてください。
低血圧が発現した場合には、併用している利尿薬及び降圧薬の用量を調節する等適切な処置を行ってください。処置後も低血圧が持続する場合は、エンレストを減量又は一時中断してください 1, 2)。
(参考)
1) エンレスト適正使用ガイド 慢性心不全 有害事象に関する重要な情報①(低血圧)
2) エンレスト適正使用ガイド 高血圧症 有害事象に関する重要な情報① 低血圧
エンレスト投与中に血管浮腫が発現した場合の対応を教えてください。
血管浮腫が認められた場合には本剤の投与を中止し、アドレナリン注射、気道確保等適切な処置を行ってください。血管浮腫が消失してもエンレストは再投与しないでださい1)。
(参考)
1) エンレスト電子添文 11.1.1
5.製剤
エンレスト粒状錠はカプセル型容器から取り出して分包してもいいですか?
エンレスト粒状錠を入れたカプセル型容器は、PTPシートから取り出して調剤しないようにしてください1)。
エンレスト粒状錠をカプセル型容器から取り出した後、粒状錠の安定性を検討したデータはありません。
(参考)
1) エンレスト電子添文 14.1
小児心不全のために単シロップで調製した懸濁液は冷蔵庫で保存してもいいですか?
保存剤を含む懸濁液の場合、保存剤の効果が減弱すると推測されるため、冷蔵保存せず、直射日光の当たらない、比較的涼しい場所で保存してください1)。単シロップで調製した懸濁液の保存期間は15~25℃で7日間です。
(参考)
1) RMP資材(患者向け):エンレスト®錠 粒状錠小児用 はじめてガイド〔小児用〕(慢性心不全)
エンレストを粉砕して投与してもいいですか?
エンレスト錠及びエンレスト粒状錠小児用を粉砕して投与することは、承認外の用法となります。粉砕投与した際の有効性、安全性、薬物動態は確立していませんので、弊社からは推奨していません。
粉砕後の安定性については、弊社お問い合わせ窓口にお問い合わせください。
エンレスト錠を一包化してもいいですか?
一包化するなど製品の包装(PTP、瓶)から取り出された状態で保存した錠剤が吸湿により変形した事例*が品質情報として報告されています。サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物は、相対湿度 60%を超えると非常に吸湿性が高くなる1) のでご留意ください。
*表面のひび割れや崩壊
なお、無包装(PTPから取り出した状態)での安定性の結果は以下の通りです。
・無包装による光の条件下における安定性試験は50mg、100mg、200mgの各剤形で行っています。120万Lux・h、≧200W・h/m2で、性状、溶出性、類縁物質、含有量はそれぞれ規格内でした。2)
・無包装による温湿度の条件下における安定性試験は100mg錠で25℃・60%RHの条件のみ検討を行っています。3ヵ月間の観察期間で、性状、類縁物質、溶出性、含量はそれぞれ規格内でした。3) 50mg錠または200mg錠での安定性を検討したデータはありません。
(参考)
1) エンレストインタビューフォーム Ⅲ-1. (3)
2) エンレストインタビューフォーム Ⅳ-6.
3) エンレストインタビューフォーム ⅩⅢ-2.
エンレスト錠は簡易懸濁法で投与してもいいですか?
エンレスト錠を懸濁して投与することは、承認外の用法となります。懸濁投与した際の有効性、安全性、薬物動態は確立していませんので、弊社からは推奨していません。
簡易懸濁関連の安定性については、弊社お問い合わせ窓口にお問い合わせください。