海外第Ⅲb相試験〔ALITHIOS試験〕
試験概要
本試験(ALITHIOS試験)は、4つの臨床試験〔本邦未承認薬のteriflunomideを対照薬として用いた海外第Ⅲ相検証試験(ASCLEPIOS Ⅰ/Ⅱ試験)、国際共同第Ⅱ相試験(APOLITOS試験継続投与パート)、海外第Ⅱ相生物学的同等性試験(APLIOS試験)〕の延長試験です。 |
【対象】
再発を伴う多発性硬化症患者(有効性解析対象集団:1,882例※1、安全性解析対象集団:1,969例※2)
◎オファツムマブ継続投与群:
ーASCLEPIOS Ⅰ/Ⅱ試験コアパートでオファツムマブが投与され、ALITHIOS試験でもオファツムマブが継続投与された患者を、有効性解析対象集団とした。
ーASCLEPIOS Ⅰ/Ⅱ試験コアパート、APLIOS試験コアパート、APOLITOS試験コアパートでオファツムマブが投与され、ALITHIOS試験でもオファツムマブが継続投与された患者を、安全性解析対象集団とした。
◎オファツムマブ新規切替群:
ーASCLEPIOS Ⅰ/Ⅱ試験コアパートではteriflunomideが投与され、ALITHIOS試験ではオファツムマブに新規切替投与が行われた患者を有効性解析対象集団または安全性解析対象集団とした。
※1:ASCLEPIOS Ⅰ/Ⅱ試験コアパートで治療完了(オファツムマブ群:946例、teriflunomide群:936例)
※2:各先行試験のコアパートで治療完了
【方法】
複数のランダム化、二重盲検、比較試験完了例を対象とした非盲検の継続投与試験。
オファツムマブ継続投与群ではオファツムマブ1回20mgを初回、1週後、2週後、4週後に皮下投与し、以降は4週毎に皮下投与、オファツムマブ新規切替群ではteriflunomide1日14mgの経口投与からオファツムマブの皮下投与へ切り替え(オファツムマブ20mgを4週毎に皮下投与)を実施し、5年間追跡することとした。この場合の用法及び用量は、本邦で承認された用法及び用量と同じである。本中間解析では、オファツムマブ4年投与時の有効性※3および安全性※4を検討した〔データカットオフ日:2021年9月25日〕。
※3:有効性データは、ASCLEPIOS Ⅰ/Ⅱ試験に基づいており、ASCLEPIOS Ⅰ/Ⅱ試験コアパートでオファツムマブ群またはteriflunomide群にランダム化された投与群に基づいて割り付けられた、オファツムマブ継続投与群またはオファツムマブ新規切替群の2群間で比較評価した。
※4:安全性データは、各先行試験のコアパートの治療完了からALITHIOS試験に登録された対象患者を含んだオファツムマブ投与時の長期データに基づいている。
【評価項目】
【有効性評価項目】
年間再発率、EDSS(総合障害度スケール)に基づく3ヵ月持続する障害増悪(3mCDW)が認められるまでの期間、EDSSに基づく6ヵ月持続する障害増悪(6mCDW)の期間、1スキャンあたりのGd造影T1病変数、年間の新規または拡大T2病変数、no evidence of disease activity(NEDA)-3、血清ニューロフィラメントL鎖(NfL)濃度
【安全性評価項目】
有害事象、IgG濃度・IgM濃度、好中球濃度・リンパ球濃度
【その他】
服薬遵守率(安全性解析対象集団)
【判定基準】
【有効性評価項目】
◎年間再発率:
コアパートおよび延長パート毎の年間再発率は、「1年あたりの確定再発回数」として定義された。新たな神経学的異常の出現または既存の神経学的異常の悪化(24時間以上持続)が、前回の臨床的脱髄イベントの発症から30日以上経過後に認められた場合を「再発」とした。また、治験担当医師とは異なるEDSS評価者が評価したEDSSに臨床的に重要な変化、すなわち、EDSSが0.5以上の増加、または2種類の機能別障害度(FS)が1以上増加、もしくは1種類のFS(膀胱直腸機能および大脳機能を除く)が2以上増加した場合を「確定再発」とした。
◎3mCDW、6mCDW:
ベースラインからのEDSSの増加が、それぞれ3ヵ月以上または6ヵ月以上持続した場合を「3mCDW」または「6mCDW」とした。
◎1スキャンあたりのGd造影T1病変数:
1スキャンあたりのGd造影T1病変数は、48週毎に評価した。
◎年間の新規または拡大T2病変数:
新規または拡大T2病変数は、1年毎に評価した。
◎NEDA-3:
確定再発、6mCDW、MRI活動性(新規Gd造影T1病変、または、新規または拡大T2病変)が認められない場合を「NEDA-3」とした。
【安全性評価項目】
◎有害事象:
有害事象(Grade/重症度を含む)が認められた患者数を評価した〔データカットオフ日:2021年9月25日〕。
◎IgG濃度・IgM濃度:
IgG濃度およびIgM濃度を、ベースライン、4週後、12週後、12週後以降は12週毎に168週後まで、168週後以降は24週毎に試験終了日まで評価した〔データカットオフ日:2021年9月25日〕。なお、IgG濃度・IgM濃度が基準値下限を下回った場合の投与中断については、治験担当医師の裁量に委ねられた。
◎好中球濃度・リンパ球濃度:
好中球濃度およびリンパ球濃度を、ベースライン、4週後、12週後、12週後以降は12週毎に168週後まで、168週後以降は24週毎に試験終了日まで評価した〔データカットオフ日:2021年9月25日〕。
【解析計画】
【有効性評価項目】
◎年間再発率:
対数リンク関数を使用し、治療法と地域を要因、前年度の再発数、ベースラインのEDSS、ベースラインのGd造影T1病変数、ベースラインの患者の年齢を共変量とした区分的負の二項回帰モデルを用いて解析した。なお、再発回数の群間比較は、Wilcoxonの符号付順位検定を用いて解析した。
◎3mCDW、6mCDW:
3mCDWおよび6mCDWの累積イベント発生率はKaplan-Meier曲線を用いて評価し、Log-rank検定を用いて解析した。
◎1スキャンあたりのGd造影T1病変数:
対数リンク関数を使用し、治療と地域を要因、ベースラインのGd造影T1病変数、ベースラインの患者の年齢を共変量とした区分的負の二項回帰モデルを用いて解析した。なお、病変数の群間比較は、Wilcoxonの符号付順位検定を用いて解析した。
◎年間の新規または拡大T2病変数:
対数リンク関数を使用し、治療と地域を要因、ベースラインのT2病変容積、ベースラインの患者の年齢を共変量とした区分的負の二項回帰モデルを用いて解析した。なお、病変数の群間比較は、Wilcoxonの符号付順位検定を用いて解析した。
◎NEDA-3:
有効性の欠如または死亡以外の理由で早期に治療を中止し、治療中止前にNEDA-3が認められた患者は除外した。コアパートおよび延長パート、投与1年目、投与1年目以降、投与期間全体について評価し、治療と地域を要因、ベースラインのEDSS、ベースラインのGd造影T1病変数、ベースラインの患者の年齢を共変量としたロジスティック回帰モデルを用いて解析した。
◎血清NfL濃度:
投与3ヵ月後、12ヵ月後、その後6ヵ月毎に測定し、反復測定混合効果モデルを用いて解析した。
【安全性】
安全性解析対象集団の有害事象発現率は86.23%(1,698/1,969例)であり、主な有害事象は感染症58.35%(1,149/1,969例)であった。重篤な有害事象の発現率は12.3%(242/1,969例)で、発現率2%以上の重篤な有害事象は感染症4.0%(78/1,969例)であった。投与中止に至った有害事象の発現率は6.5%(128/1,969例)で、発現率2%以上のものは臨床検査値6.5%(128/1,969例)、血中IgM減少3.1%(62/1,969例)であった。注射に伴う全身反応が24.73%(487/1,969例)、注射部位反応が11.83%(233/1,969例)であった。死亡は6例(突然死1例、自殺1例、COVID-19およびCOVID-19肺炎1例、COVID-19 1例、腸転移1例、肺炎および敗血性ショック1例)に認められたが、いずれも薬剤との関連性はなかった。なお、安全性解析対象集団には、ASCLEPIOS Ⅰ/Ⅱ、APLIOS、APOLITOSまたはALITHIOS試験でオファツムマブが少なくとも1回投与された被験者を含み、安全性解析には、オファツムマブの長期安全性および累積安全性を評価するため、オファツムマブ投与開始以降のデータのみを用いており、オファツムマブ継続投与群およびオファツムマブ新規切替群の各群における有害事象発現率に関しては集計を行わなかった。
Hauser SL, et al.:Mult Scler. 2023; 29(11-12): 1452-1464.
ノバルティスは本研究に資金提供を行いました。著者には、ノバルティスが過去に旅費、原稿執筆料、コンサルタント料、助成金、研究資金、
講演料、教育活動支援料、アドバイザリーボード料を支払った者が含まれています。本論文の著者のうち、5名はノバルティスの社員です。