国際共同第Ⅱ相試験〔APOLITOS試験〕
試験概要
本剤は、日本人患者を含む国際共同第Ⅱ相試験の結果から、海外第Ⅲ相検証試験の結果を基に承認されたため、日本人患者を対象とした第Ⅲ相試験は実施されておりません。 |
【目的】
日本人を含む再発を伴う多発性硬化症患者を対象に、オファツムマブ20mgを皮下投与したときの有効性および安全性をプラセボとの比較により評価する。
【方法】
再発を伴う多発性硬化症患者64例(日本人患者32例)
<選択基準>
- スクリーニング時の年齢:18~55歳
- McDonald診断基準(2010年改訂版)で多発性硬化症と診断された患者
- 再発を伴う多発性硬化症患者
- スクリーニング前2年以内に新規の神経学的異常または既存の神経学的異常の悪化が1回以上認められ、かつ、ランダム化前1年以内に脳MRIで疾患活動性(Gd造影T1病変もしくは新規または拡大T2病変)が認められた患者
- スクリーニング時のEDSS:0~5.5
- ランダム化前1ヵ月以内に神経学的に安定している患者
【試験デザイン】
第Ⅱ相、国際共同、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験。コアパート(スクリーニング期:最長45日間、二重盲検投与期:24週間)、および継続投与パート(二重盲検負荷投与期:4週間、非盲検投与期:20週間以上44週間以下)で構成されている。
【投与方法】
コアパートでは、スクリーニング期で適格と判定された患者は、二重盲検投与期の1日目にオファツムマブ群またはプラセボ群に2:1の比でランダム化され、割り付けられた治験薬を初回(1日目)、1週後、2週後、4週後、以降は4週毎に20週後まで皮下投与した。
継続投与パートの二重盲検負荷投与期では、コアパートでプラセボ群であった患者には24、25および26週時にオファツムマブ20mgを皮下投与し(オファツムマブ切替群)、オファツムマブ群であった患者には24週時にオファツムマブ20mgを、25および26週時にプラセボを皮下投与した(オファツムマブ継続群)。非盲検投与期では、すべての患者に28週時以降4週毎にオファツムマブ20mgを皮下投与した。
※初回投与(1日目)は、院内にて医療施設のスタッフが皮下投与したが、2回目以降は患者の希望に応じて、院内にてスタッフの指導下で患者/介護者が自己投与できることとした。25週時以降は、患者の希望に応じて医師の判断により患者/介護者による在宅自己投与できることとした。ただし、本試験で使用した皮下投与製剤は、安全装置付きのプレフィルドシリンジ製剤である。
【評価項目】
◎主要評価項目:
1スキャンあたりのGd造影T1病変数〔投与24週後まで(MRI評価時点:12、16、20、24週目)〕(検証的な解析項目)。地域間[日本または海外(ロシア)]の一貫性を評価するために地域別にサブグループ解析を実施。
◎副次評価項目:
<コアパート>年間の新規または拡大T2病変数、年間再発率、初回再発までの期間
PK/PD評価項目:CD19陽性B細胞数、血漿中オファツムマブ濃度
<継続投与パート>Gd造影T1病変数(MRIスキャン1回あたり)、年間の新規または拡大T2病変数、年間再発率、初回再発までの期間
【解析計画】
有効性評価項目は、投与24週後までのコアパートの解析には最大の解析対象集団(FAS:ランダム化されたすべての患者集団)、投与24週以降の継続投与パートを含む解析にはExtension FAS(継続投与パートでオファツムマブが1 回以上投与されたすべての患者集団)を主要解析集団として解析した。
主要評価項目:
対数リンクによる負の二項回帰モデルを用いた。Gd造影T1病変数の累積数を反応変数、MRIスキャン回数の自然対数をオフセット変数として用い、投与群、地域(日本または外国)、ベースラインのGd造影T1病変数(0または1以上)を要因として含めた。
副次評価項目
<コアパート>
年間の新規または拡大T2病変数:対数リンクによる負の二項回帰モデルを用いた。前回のMRIスキャンの新規または拡大T2病変数を反応変数、ベースラインから当該MRI評価までの期間(年)の自然対数をオフセット変数として用い、投与群、地域(日本または外国)、ベースラインのGd造影T1病変数(0または1以上)を要因、ベースラインのT2病変容積を連続変数の共変量として含めた。
年間再発率:
患者毎の確定再発の累積数を反応変数、試験期間(年)の自然対数をオフセット変数とし、対数リンクによる負の二項回帰モデルを用いて推定した。投与群、地域(日本または外国)およびオフセット変数のみを含むモデルを採用した。
初回再発までの期間:
投与群、地域(日本または外国)、およびベースラインのGd造影T1病変数(0または1以上)を要因、ベースラインの過去1年間の再発回数およびEDSSを共変量としたCox比例ハザードモデルを用い、プラセボ群に対するオファツムマブ群のハザード比の推定値、95%信頼区間、およびp値を算出した。
<継続投与パート>
Gd造影T1病変数:
投与群、投与期間および在宅自己投与の有無別に要約統計量を算出した。
年間の新規または拡大T2病変数、年間再発率:
投与群および投与期間別に要約統計量を算出した。
初回再発までの期間:
投与群別にイベント累積発現率の推移をKaplan-Meier曲線を用いて示した。
【安全性】
<コアパート>
副作用発現率は、オファツムマブ群27.9%(12/43例)、プラセボ群38.1%(8/21例)であった。主な副作用は、オファツムマブ群では注射に伴う全身反応23.3%(10/43例)、リンパ球減少症4.7%(2/43例)、プラセボ群では注射に伴う全身反応33.3%(7/21例)、注射部位反応9.5%(2/21例)であった。重篤な有害事象は、オファツムマブ群の慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー1例であった。投与中止に至った有害事象および死亡は報告されなかった。
<継続投与パート>
副作用発現率は、全体で39.0%(23/59例)、オファツムマブ継続群42.5%(17/40例)、オファツムマブ切替群31.6%(6/19例)であった。主な副作用(2例以上に発現)は、オファツムマブ継続群で、注射に伴う反応25.0%(10/40例)、注射部位反応7.5%(3/40例)、リンパ球減少症5.0%(2/40例)であり、オファツムマブ切替群では、注射に伴う反応21.1%(4/19例)であった。重篤な有害事象はオファツムマブ継続投与群の重篤な急性心不全1例であった。投与中止に至った有害事象および死亡は報告されなかった。
社内資料:国際共同第Ⅱ相試験(G1301試験)[承認時評価資料]