びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)
SETUP study
再発⼜は難治性のDLBCL(FLからの形質転換を含む)の⽇本⼈患者におけるキムリアの有効性及び安全性を評価する実臨床データ解析、レトロスペクティブ研究
データカットオフ:2021年10⽉(追跡期間中央値:6.6ヵ⽉)
Limitation SETUP studyは、⽐較的少数の患者を対象としたレトロスペクティブ研究で、短期間の追跡調査である。評価可能な患者では、キムリア投与前のPET-CT画像が利⽤可能であった。⻑期にわたる⾎球減少や低ガンマグロブリン⾎症など、キムリアに特異的な⻑期有害事象はモニターしなかった。 |
Goto, H. et al.:Int J Clin Oncol. 2023; 28(6): 816-826 COI:著者にノバルティスより謝礼、研究助成⾦を受領した者が含まれる。
監修:北海道大学病院 血液内科/検査・輸血部 後藤 秀樹 先生
試験概要
- 試験デザイン
目的 | 実臨床でキムリアを投与された⽇本⼈患者を対象に、有効性、安全性、及びキムリア投与後の早期再発⼜は⾮奏効に関連する因⼦を検討する。
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対象 | 2019年10⽉〜2021年10⽉に北海道⼤学、東北⼤学、京都⼤学、岡⼭⼤学、九州⼤学でキムリアによる治療を受けた再発⼜は難治性のDLBCL患者89例(FLからの形質転換の患者18例を含む) |
評価項目・ 判定基準・ 解析計画 | 評価項目 判定基準 解析計画 |
患者背景
- 患者背景
有効性(奏効率・OS・EFS)
追跡期間中央値(6.6ヵ⽉)時点における奏効率は73.0%であり、その内訳はCRが55.0%、PRが18.0%でした
- 奏効(完全奏効+部分奏効)率
投与例89例における6ヵ⽉時点のOSは76.6%、12ヵ⽉時点のOSは67.0%でした
- Kaplan-Meier法で推定したOS曲線(部分集団解析:6ヵ月時点でCR)
投与例89例における6ヵ⽉時点のEFSは54.0%、12ヵ⽉時点のEFSは46.3%でした
- Kaplan-Meier法で推定したEFS曲線(部分集団解析:6ヵ月時点でCR)
有効性(リンパ球除去化学療法前の 疾患状態別のOS・EFS:部分集団解析)
リンパ球除去化学療法前の疾患状態がCR/PRであった患者とSD/PDであった患者のOSは、有意差が認められました(部分集団解析)
- Kaplan-Meier法で推定したOS曲線
リンパ球除去化学療法前の疾患状態がCR/PRであった患者とSD/PDであった患者のEFSは、有意差が認められました(部分集団解析)
- Kaplan-Meier法で推定したEFS曲線
有効性(リンパ球除去化学療法前の MTV80mL未満/以上別のOS・EFS:部分集団解析)
リンパ球除去化学療法前にMTV80mL未満であった患者とMTV80mL以上であった患者のOSは、有意差が認められました(部分集団解析)
- Kaplan-Meier法で推定したOS曲線
リンパ球除去化学療法前にMTV80mL未満であった患者とMTV80mL以上であった患者のEFSは、有意差が認められました(部分集団解析)
- Kaplan-Meier法で推定したEFS曲線
有効性(多変量解析、部分集団別のOS・EFSのまとめ)
リンパ球除去化学療法前の疾患状態がSD/PD、MTV80mL以上であった患者は、EFS、OSともに不良でした
有効性(予後予測アルゴリズム・ リンパ球除去療法前のMTV及び疾患状態によるリスク別OS・EFS)
CAR-T細胞療法に対する⾮奏効・早期再発の予後予測アルゴリズム
リンパ球除去化学療法前のMTV及び疾患状態によるリスク別OS(部分集団解析)
- Kaplan-Meier法で推定したOS曲線
リンパ球除去化学療法前のMTV及び疾患状態によるリスク別EFS(部分集団解析)
- Kaplan-Meier法で推定したEFS曲線
安全性
CRS※1は、患者の80/89例(89.9%)に認められました。グレード3以上は6/89例(6.7%)でした。 ICANS※1は、5/89例(5.6%)に認められました。グレード3以上は1/89(1.1%)でした。
※1 CRS、ICANSの評価は、ASTCTが提唱した評価尺度を⽤いた。
- 有害事象の発現状況
全グレードの主な感染症は、サイトメガロウイルス抗原血症、菌⾎症、敗⾎症でした。その他の主な有害事象は、ALT上昇、AST上昇、下痢、浮腫、クレアチニン上昇でした。治療関連死亡は認められませんでした。
- 感染症及びその他の有害事象
【効能、効果又は性能】 1. 再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病。ただし、以下のいずれかの場合であって、CD19抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がない患者に限る。 ・初発の患者では標準的な化学療法を2回以上施行したが寛解が得られない場合 ・再発の患者では化学療法を1回以上施行したが寛解が得られない場合 ・同種造血幹細胞移植の適応とならない又は同種造血幹細胞移植後に再発した場合 2. 再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫。ただし、以下のいずれかの場合であって、CD19抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がない、かつ、自家造血幹細胞移植の適応とならない又は自家造血幹細胞移植後に再発した患者に限る。 ・ 初発の患者では化学療法を2回以上、再発の患者では再発後に化学療法を1回以上施行し、化学療法により完全奏効が得られなかった又は完全奏効が得られたが再発した場合 ・ 濾胞性リンパ腫が形質転換した患者では通算2回以上の化学療法を施行し、形質転換後には化学療法を1回以上施行したが、形質転換後の化学療法により完全奏効が得られなかった又は完全奏効が得られたが再発した場合 3. 再発⼜は難治性の濾胞性リンパ腫。ただし、以下の場合であって、CD19抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がない患者に限る。 ・ 初発の患者では全⾝療法を2回以上、再発の患者では再発後に全⾝療法を1回以上施⾏し、全⾝療法により奏効が得られなかった⼜は奏効が得られたが再発した場合 《効能、効果又は性能に関連する使用上の注意》 1. 再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病 (1)25歳以下(投与時)の患者に使用すること。 (2)フローサイトメトリー法又は免疫組織染色法等により検査を行い、CD19抗原が陽性であることが確認された患者に使用すること。 (3)臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、【臨床成績】の項の内容を熟知し、本品の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。 2. 再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (1)臨床試験に組み入れられた患者の組織型及び前治療歴等について、【臨床成績】の項の内容を熟知し、本品の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。 |
ALT: alanine aminotransferase/glutamic pyruvic transaminase;アラニンアミノトランスフェラーゼ(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)
AST: aspartate aminotransferase/glutamic oxaloacetic transaminase;アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)
CAR: chimeric antigen receptor;キメラ抗原受容体
CI: confidence interval;信頼区間
CR: complete response;完全奏効
CRS: cytokine release syndrome;サイトカイン放出症候群
DLBCL: diffuse large B-cell lymphoma;びまん性⼤細胞型B細胞リンパ腫
ECOG PS: Eastern Cooperative Oncology Group performance status;⽶国腫瘍学団体の定めたパフォーマンスステータス
EFS: event free survival;無イベント⽣存期間
FL: follicular lymphoma;濾胞性リンパ腫
HR: hazard ratio;ハザード比
HSCT: hematopoietic stem cell transplantation;造⾎幹細胞移植
ICANS: immune effector cell-associated neurotoxicity syndrome;免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群
LDH: lactate dehydrogenase;乳酸脱水素酵素
MTV: metabolic tumor volume;総代謝腫瘍体積
OS: overall survival;全⽣存期間
PD: progressive disease;進⾏
PR: partial response;部分奏効
SD: stable disease;安定
tFL: 形質転換濾胞性リンパ腫