治療の評価

治療の評価

監修:東京女子医科大学 脳神経内科 特命担当教授 清水 優子 先生

治療の効果判定

MSの治療アウトカムにおいて、再発がなく、新規MRI病変の出現がなく、MSに関した脳萎縮の進行が認められず、症状の進行がない状態をNEDA-4と呼び、疾患活動性を評価する概念として提唱されています1)。 (NEDA
NEDA-4に5)脳脊髄液中のニューロフィラメント軽鎖(NfL)が正常値である、という条件を追加したNEDA-5も提唱されています4)

 

【活動性の評価】
再発

再発抑制を評価する指標として、年間再発率、無再発生存期間があります。MSでは無症候性の脳病変が多いことや、慢性に進行する病態が存在することから、再発頻度のみで治療効果を評価することは勧められていません1)

 

新規MRI病変の出現

MRI撮像は、活動性が高いうちは3ヵ月程度の間隔で、活動性が低ければ半年~1年程度の間隔で行い、T2強調画像による新規病変や病巣拡大の有無を評価することが勧められています1)

 

【進行の評価】
臨床症状の障害進行

MSの臨床症状の評価には「Kurtzke総合障害度スケール(EDSS)」が適しており、急性期治療のアウトカム評価に有用である。また、EDSSは進行型MSにおいて症状の進行を評価する尺度としても用いられています2)
移動能力の評価尺度[Timed 25-Foot Walk test(T25FW)]、上肢機能の評価尺度[9-Hole Peg Test(9-HPT)]、視覚情報処理スピードと作業記憶を評価する認知機能評価尺度[Symbol Digit Modalities Test(SDMT)]などもMSの障害進行を評価するスケールとして用いられています2)。(障害度評価

 

脳萎縮

脳MRIによる脳萎縮の抑制効果も治療評価に有用と考えられていますが、日常臨床で用いられることは少ないです3)。灰白質の萎縮は、白質の萎縮よりも疾患進行との関連性が高かったという報告もなされています5)

 

non-responderの判定3)

治療開始後も疾患活動性が持続し、再発や障害度の進行が認められる患者を「non-responder」と呼びます。「多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017」では、non-responderと判断された場合は、再発予防と進行抑制のために治療薬の変更を行うことが推奨されています。(治療戦略
少なくとも治療開始1年後に、再発頻度と障害度の進行、MRI画像の変化によって治療反応性を評価することが重要です。

 

【Reference】

1)日本神経学会 監修 『多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017』 医学書院 p142-143 2017年
2)日本神経学会 監修 『多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017』 医学書院 p72 2017年
3)日本神経学会 監修 『多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017』 医学書院 p154-157 2017年
4)Giovannoni, G. Curr Opin Neurol 31(3): 233-243, 2018
5)Jacobsen C et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. Oct;85(10):1109-15, 2014


Source URL: https://www.pro.novartis.com/jp-ja/ns/ms/treatment/te