ルタテラ 内科治療
NENの治療は外科的切除が原則ですが、切除不能な場合には、ホルモン由来の症状改善や腫瘍制御を目的として内科治療が行われます。腫瘍の分化度および悪性度、腫瘍量、原発巣の部位に合わせて、患者ごとに治療が選択されます。肝転移例に対しては、全身療法、減量手術や局所療法(RFAやTACE)を組み合わせた集学的な治療が考慮されます。
Neuroendocrine Tumor(NET) G1~G3に対する全身療法*
[膵]進行膵NETに対する腫瘍制御には、日本では分子標的療法(エベロリムス*1・スニチニブ)、ソマトスタチンアナログ療法(ランレオチド*6)または化学療法(ストレプトゾシン)などが選択肢となります。
[消化管]進行消化管NETに対する腫瘍制御には、日本では分子標的療法(エベロリムス*2)またはソマトスタチンアナログ療法(オクトレオチド*3、ランレオチド)、化学療法(ストレプトゾシン)などが選択肢となります。
[肺]進行肺NET(肺癌WHO分類(第5版):定型カルチノイド、異型カルチノイド)に対する腫瘍制御には、日本では分子標的療法(エベロリムス*2)などが選択肢となります。
*:肺NETに関しては、肺癌WHO分類(第5版)における定型カルチノイド、異型カルチノイドが該当
Neuroendocrine carcinoma(NEC)に対する全身療法
病理学的にも臨床的にも類似の性格を有する小細胞肺癌の治療に準じ、白金製剤をベースとした多剤併用療法(シスプラチン+エトポシド*4またはシスプラチン+イリノテカン*5)が多用されています。
表1 NETの適応を有する薬剤一覧
薬剤名 | 効能又は効果 | 用法及び用量 |
サンドスタチン®LAR® 筋注用キット (オクトレオチド酢酸塩) | ○ 下記疾患に伴う諸症状の改善 消化管ホルモン産生腫瘍(VIP産生腫瘍、カルチノイド症候群の特徴を示すカルチノイド腫瘍、ガストリン産生腫瘍) ○ 消化管神経内分泌腫瘍 ○ 下記疾患における成長ホルモン、ソマトメジン-C分泌過剰状態及び諸症状の改善 先端巨大症・下垂体性巨人症(外科的処置、他剤による治療で効果が不十分な場合又は施行が困難な場合) | 消化管ホルモン産生腫瘍:通常、成人にはオクトレオチドとして20mgを4週毎に3ヵ月間、殿部筋肉内に注射する。その後は症状により10mg、20mg又は30mgを4週毎に投与する。ただし、初回投与後2週間は薬物濃度が十分な濃度に達しないことから、本剤投与前に投与していた同一用量のオクトレオチド酢酸塩注射液を併用する。 消化管神経内分泌腫瘍:通常、成人にはオクトレオチドとして30mgを4週毎に、殿部筋肉内に注射する。なお、患者の状態により適宜減量すること。 先端巨大症・下垂体性巨人症:通常、成人にはオクトレオチドとして20mgを4週毎に3ヵ月間、殿部筋肉内に注射する。その後は病態に応じて10mg、20mg又は30mgを4週毎に投与するが、30mg投与で効果が不十分な場合に限り40mgまで増量できる。 |
ソマチュリン®皮下注 (ランレオチド酢酸塩) | ○ 下記疾患における成長ホルモン、IGF-I(ソマトメジン-C)分泌過剰状態及び諸症状の改善:先端巨大症・下垂体性巨人症 (外科的処置で効果が不十分な場合又は施行が困難な場合) ○ 甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍 ○ 膵・消化管神経内分泌腫瘍 | 先端巨大症・下垂体性巨人症、甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍:通常、成人にはランレオチドとして90mgを4週毎に3ヵ月間、深部皮下に注射する。その後は患者の病態に応じて60mg、90mg又は120mgを4週毎に投与する。 膵・消化管神経内分泌腫瘍:通常、成人にはランレオチドとして120mgを4週毎に、深部皮下に注射する。 |
アフィニトール®錠 (エベロリムス) | 1. 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌 2. 神経内分泌腫瘍 3. 手術不能又は再発乳癌 4. 結節性硬化症 | 腎細胞癌、神経内分泌腫瘍の場合:通常、成人にはエベロリムスとして1日1回10mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。 手術不能又は再発乳癌の場合:内分泌療法剤との併用において、通常、成人にはエベロリムスとして1日1回10mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。 結節性硬化症の場合、成人の結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の場合:通常、エベロリムスとして1日1回10mgを経口投与する。なお、患者の状態やトラフ濃度により適宜増減する。 上記以外の場合:通常、エベロリムスとして3.0mg/m2を1日1回経口投与する。なお、患者の状態やトラフ濃度により適宜増減する。 |
スーテント®カプセル (スニチニブ) | ○ イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍 ○ 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌 ○ 膵神経内分泌腫瘍 | イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌:通常、成人にはスニチニブとして1日1回50mgを4週間連日経口投与し、その後2週間休薬する。これを1コースとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。 膵神経内分泌腫瘍:通常、成人にはスニチニブとして1日1回37.5mgを経口投与する。なお、患者の状態により、適宜増減するが、1日1回50mgまで増量できる。 |
ザノサー®点滴静注用 (ストレプトゾシン) | 膵・消化管神経内分泌腫瘍 | 下記用法・用量のいずれかを選択する。 1. 5日間連日投与法:通常、成人にはストレプトゾシンとして1回500mg/m2(体表面積)を1日1回5日間連日点滴静脈内投与し、37日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。 2. 1週間間隔投与法:通常、成人にはストレプトゾシンとして1回1,000mg/m2(体表面積)を1週間ごとに1日1回点滴静脈内投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1回の投与量は1,500mg/m2(体表面積)を超えないこと。 |
ルタテラ®静注 (ルテチウムオキソドトレオチド(177Lu)) | ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍 | 通常、成人にはルテチウムオキソドトレオチド(177Lu)として1回7.4GBqを30分かけて8週間間隔で最大4回まで点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する。 |
各薬剤添付文書(2022年3月現在)
*1 Yao JC, Shah MH, Ito T, et al. N Engl J Med. 2011; 364: 514-523.
*2 Yao JC, et al. Lancet 2016; 387: 968-977.
*3 Rinke A, et al. J Clin Oncol. 2009; 27: 4656-4663.
*4 Fjällskog ML, et al. Cancer. 2001; 92(5): 1101-1107.
*5 Kulke MH, et al. Dig Dis Sci. 2006; 51(6): 1033-1038.
*6 Caplin ME, et al. N Engl J Med. 2014; 371(3): 224-233.