ルタテラ NEN(神経内分泌腫瘍)の病理組織診断

ルタテラ NEN(神経内分泌腫瘍)の病理組織診断

 

 

ご監修:日本鋼管病院/医療福祉大学大学院 病理診断科 長村 義之 先生

 

膵・消化管NENの病理組織診断

WHO分類2017(Endocrine Organs)および2019(Digestive systems) にて、内分泌系の性質と表現型を有する膵・消化管腫瘍は“Neuroendocrine Neoplasms(NEN)”と総称され、臨床予後と生物学的動態の異なるNET(Neuroendocrine tumor)、NEC(Neuroendocrine carcinoma)およびMiNEN(Mixed neuroendocrine-non-neuroendocrine neoplasm)に大別されています(表1)。WHO分類2019は腫瘍の増殖動態すなわち“核分裂像数”および“Ki-67標識率”を中心とした分類です(表2)。NETはG1(Grade1)、G2(Grade2)およびG3(Grade3)の3つにさらに識別され、NECは形態学的所見に基づきSmall cell type(SCNEC)とLarge cell type(LCNEC)に分類されることになりました。NETは高分化型腫瘍であり、異型度および悪性度は比較的低い一方、NECは低分化型であり、増殖能および悪性度が高く予後不良です。MiNENは神経内分泌(NE)成分と非NE成分が混在するもので、両成分が形態学的および免疫組織化学的にともに認識され、いずれの成分も30%以上含まれる腫瘍(浸潤癌)と定義されています。これらは治療選択や患者の予後が異なるため、WHO分類が非常に重要となります。

 

肺NENの病理組織診断

WHO分類2021(Thoracic Tumours)では、カルチノイドと神経内分泌癌に大別され、さらにカルチノイドは定型カルチノイドと異型カルチノイドに、神経内分泌癌は小細胞癌と大細胞神経内分泌癌に分類されます(表3)。
定型カルチノイドは高分化型であり、低グレードで予後良好です。異型カルチノイドも高分化型ですが、中間グレードと定義されています。 小細胞癌は増殖能が高く、大細胞神経内分泌癌は増殖能が高く、神経内分泌マーカーを発現しており、悪性度が高いとされています。
なお、他の癌腫と同様に、原発巣別のTNM分類(Staging)を行うことが推奨されています。TNM分類は患者の予後予測に関して非常に有用であり、今後、治療方針を決定する際にも用いられるようになると考えられます。ただし、TNM分類に関しては、ENETSとAJCC/UICCの分類があり、各種癌取り扱い規約にどちらの分類を使用するか記載されていることもありますが、TNM分類を実施した場合には、分類法の明記が必要となります。
NENの病理診断書の作成については、WHO分類2019の本文中や2019年5月にイタリアで開催された第5回NIKE(Neuroendocrine tumors Innovation in Knowledge and Education)会議のレポート(Albertelli M, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2021; 12: 680305)で、記載の必要な最低限の項目が挙げられています。

 

表1 WHO分類の変遷

WHO20101)
(Digestive systems)

WHO20172)
(Endocrine Organs)

WHO20193)
(Digestive systems)

Neuroendocrine tumour
NET G1/G2
Neuroendocrine tumour
NET G1/G2/G3
(well-differentiated NEN)
Neuroendocrine tumour
NET G1/G2/G3
(well-differentiated NEN)
Neuroendocrine carcinoma
NEC(G3)
large cell or small cell type
NEC(G3)
large cell or small cell type
(poorly differentiated NEN)
NEC(G3)
large cell or small cell type
(poorly differentiated NEN)
Mixed adeno-neuroendocrine carcinoma
(MANEC)
Mixed neuroendocrine-non-neuroendocrine neoplasm
(MiNEN)
Mixed neuroendocrine-non-neuroendocrine neoplasm
(MiNEN)*
Hyperplastic and preneoplastic lesions  

*腺癌成分とNEC成分からなるMANECの場合、MANECを診断名として使用できる。

 

表2 消化管NENの分類(WHO分類2019)

分類名

分化度

Grade

核分裂像数a
(/2mm2

Ki-67標識率b

NETNET G1高分化    Low<2<3%
NET G2Intermediate2~203~20%
NET G3    High>20>20%
NECSmall cell type(SCNEC)低分化Highc>20>20%
Large cell type(LCNEC)>20>20%
MiNEN高分化or低分化dVariabledVariabledVariabled

a. 核分裂像数:0.2mm2の50視野(すなわち総面積10mm2)でカウントすることによって計測される2mm2(10HPF、40倍、直径0.5mm)あたりの核分裂像数。
b. Ki-67標識率:走査倍率で同定される、最も核の標識率が高い領域(ホットスポット)で少なくとも500個の腫瘍細胞でカウントする。Grade の確定は、Ki-67標識率または核分裂像数のいずれか高いほうに基づき行う。
c. 低分化型NECは形式上gradingを行わないが、定義上は高悪性度(high-grade)とされる。
d. ほとんどのMiNENでは、神経内分泌成分(NE成分)と非神経内分泌成分(非NE成分)の両方ともが低分化型であり、NE成分はNECと同じ範囲の増殖能を有する。
しかし、MiNENという総称においては、NE成分と非NE成分のどちらか一方または両方の成分が高分化型である場合もあり得る。可能な場合は、両成分をgradingする。

 

表3 肺NENの分類(WHO分類2021)

分類名    

形態

核分裂像数
(/2mm2)

壊死

定型カルチノイド5mm以上のカルチノイド形態<2なし
異型カルチノイドカルチノイド形態2~10あり(限局性で点状)
小細胞癌小型で(通常小リンパ球3つ分の直径以下)、細胞質が乏しい、微細顆粒状のクロマチン、核小体がないまたは目立たない>10あり(しばしば広範)
大細胞神経内分泌癌神経内分泌形態(類器官様胞巣、柵状、ロゼット形成、索様)、大型で非小細胞癌の特徴を示す(低いN/C比、水泡様核、疎もしくは微細なクロマチン、しばしば核小体を伴う)、クロマチンは粗造から顆粒状、Ki-67標識率>30%、NSE以外1つ以上の神経内分泌マーカー陽性または神経内分泌顆粒を確認>11    あり(しばしば広範)

参考文献

  1. WHO Classification of Tumours of the Digestive System. Eds: Bosman FT, et al. 4th Edition, 2010, IARC Press, Lyons France.
  2. WHO Classification of Tumours of Endocrine Organs. Eds: Lloyd RV, et al. 4th edition, 2017, IARC Press, Lyon, France.
  3. WHO Classification of Tumours. Digestive System Tumours. Eds: WHO Classification of Tumours Editorial Board. 5th Edition, 2019, IARC Press, Lyon, France.
     

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Source URL: https://www.pro.novartis.com/jp-ja/products/lutathera/diagnosis/06