疾患について
ガイドラインにおける抗体製剤での治療方法
蕁麻疹診療ガイドライン
(©秀道広ほか:蕁麻疹診療ガイドライン2018. 日皮会誌. 128(12), 2503-2624, 2018)
蕁麻疹の定義
蕁麻疹診療ガイドラインでは、蕁麻疹を以下のように定義しています。
蕁麻疹は膨疹、すなわち紅斑を伴う一過性、限局性の浮腫が病的に出没する疾患であり、多くは痒みを伴う。通常の蕁麻疹に合併して、あるいは単独に、皮膚ないし粘膜の深部を中心とした限局性浮腫は、特に血管性浮腫と呼ぶ。 |
©秀道広ほか:蕁麻疹診療ガイドライン2018. 日皮会誌. 128(12), 2503-2624, 2018
蕁麻疹の主な病型
蕁麻疹はその経過、形態、原因などさまざまな観点から分類することができますが、蕁麻疹診療ガイドラインでは、まず皮疹が誘発できるか否かという観点から、皮疹を誘発できない「特発性の蕁麻疹」と、特定刺激で誘発される「刺激誘発型の蕁麻疹」に大別しています。さらに、蕁麻疹の特殊型ともいえる「血管性浮腫」および「蕁麻疹関連疾患」を加え、下表のように分類しています。
蕁麻疹の主たる病型1)
Ⅰ.特発性の蕁麻疹 spontaneous urticaria
Ⅱ.刺激誘発型の蕁麻疹(特定刺激ないし負荷により皮疹を誘発することができる蕁麻疹)inducible urticaria※
Ⅲ.血管性浮腫 angioedema
Ⅳ.蕁麻疹関連疾患 urticaria associated diseases
※ 国際ガイドライン2)では、6週間以上続く蕁麻疹は刺激誘発型の蕁麻疹を含めてchronic urticaria に分類される |
1)©秀道広ほか:蕁麻疹診療ガイドライン2018. 日皮会誌. 128(12), 2503-2624, 2018
2)Zuberbier T, et al. Allergy. 73(7), 1393-1414, 2018
病型確定のための検査
病型 | 検査の目的と内容 |
---|---|
Ⅰ.特発性の蕁麻疹 | |
急性蕁麻疹 | 増悪・背景因子の検索 病歴、身体所見などから関連性が疑われる場合に適宜検査を行う。 |
Ⅱ.刺激誘発型の蕁麻疹 | |
アレルギー性の蕁麻疹 | 原因アレルゲン検索 プリックテスト、血清IgE結合試験などによる特異的IgEの存在の証明。ただし、これらの検査で過敏性が示された抗原が蕁麻疹の原因であるとは限らないので、ていねいな問診、負荷試験の結果などを総合的に判断する。 |
食物依存性運動誘発アナフィラキシー | |
非アレルギー性の蕁麻疹 | 一般的に有用な検査はない.必要に応じて負荷試験。 |
アスピリン蕁麻疹 | 原因薬剤の同定 被疑薬剤によるプリックテスト(I型アレルギーの除外)。必要に応じて少量の被疑薬剤による負荷(誘発)試験。 |
物理性蕁麻疹 | 病型確定のための検査 診断を厳密に確定する必要がある場合には、経過から疑われる物理的刺激による誘発試験を行う。 |
コリン性蕁麻疹 | 運動・入浴等による誘発試験、温熱発汗試験。必要に応じて汗アレルギー関連の検査。 |
接触蕁麻疹 | アレルギー性ではプリックテスト、特異的IgEの存在の証明と負荷(誘発)試験。 非アレルギー性では必要に応じて負荷(誘発)試験。 |
Ⅲ.血管性浮腫 | |
すべての血管性浮腫 | 病型の確定、原因・増悪・背景因子の検索 通常(特発性、刺激誘発性)の蕁麻疹に準じ、病歴から考えられる病型に応じて検索する。表在性の蕁麻疹の合併がなく、C1-INH不全が疑われる場合は、補体C3、C4、CH50、C1-INH活性などを測定する。 |
Ⅳ.蕁麻疹関連疾患 | |
蕁麻疹様血管炎 | 診断の確定 血液検査(CRP上昇、補体低下、末梢血白血球数増加など)と皮疹部の生検による血管炎の確認。 |
色素性蕁麻疹 | 診断の確定 皮疹部の擦過(ダリエ徴候)皮疹部の生検によるマスト細胞の過剰な集簇の確認。 |
Schnitzler症候群およびクリオピリン関連周期熱症候群 | 診断の確定 血液検査(CRP上昇、単クローン性IgG・IgM増多、末梢血白血球数増加など)、皮疹部の生検、骨異常の確認、遺伝子検査など。 |
蕁麻疹の「評価」に関する項目の新設
蕁麻疹の評価の重要性
- 蕁麻疹の治療では、遺伝的な病型を除き、最終的には無治療で症状が現れない状態(治癒)を目指す
- しかし、その症状は、直接生命に関わるものから社会生活上の支障をきたさないものまで様々であり、治療内容は症例毎にその制御の必要度を考慮して決定する必要がある
- 蕁麻疹の診療では個々の患者の病型、重症度、社会的背景および病勢の推移を評価し、治療の効果と負担のバランスを測ることが大切である
国際ガイドラインで使用が推奨されている評価ツール
- UAS7(Urticaria Activity Score 7:慢性蕁麻疹の活動性スコア)
- CU-Qo2L(Chronic Urticaria Quality of Life Questionnaire:慢性蕁麻疹のQOLスコア)
- AAS(Angioedema Activity Score:血管性浮腫の活動性スコア)
- AE-QoL(Angioedema Quality of Life Questionnaire:血管性浮腫のQOLスコア)
- UCT(Urticaria Control Test:蕁麻疹コントロールテスト)
蕁麻疹の診断手順
蕁麻疹の診断は、視診と問診で膨疹の有無を確認することから始まり、続いて誘因の有無を明らかにします。図に、蕁麻疹の診断手順を示します。
蕁麻疹の診断・治療手順の概要
©秀道広ほか:蕁麻疹診療ガイドライン2018. 日皮会誌. 128(12), 2503-2624, 2018
蕁麻疹を診断するには、まず視診で膨疹の有無を確認します。来院時に皮疹がみられないことも多く、膨疹が消退していく過程で淡い紅斑だけがみられることもあります。このようなときは個々の皮疹の持続時間を問診することにより膨疹の可能性を推測します。
蕁麻疹の治療
蕁麻疹の治療の基本は、誘因や原因の除去・回避と薬物療法です。まず臨床的に蕁麻疹の種類を診断し、誘因や原因を特定できる蕁麻疹に対しては、原因物質・誘発因子・アレルゲン・抗原などを除去するよう努めるとともに、抗ヒスタミン薬を中心とした薬物療法を行います。一方、原因を特定できない特発性の蕁麻疹に対しては、抗ヒスタミン薬を基本とする薬物療法を中心に行います。
当面の治療の目標は、症状が現れない、または生活に支障のない程度まで皮疹をコントロールすることで、最終的には薬剤を使用しなくても症状が現れない状態になることをめざします。
蕁麻疹の病型と治療目標
蕁麻疹はまず臨床的にその種類を診断し、個々の症例の特徴を踏まえて治療内容を立案することが大切である。
特定の刺激に反応して皮疹が現れる場合(刺激誘発型の蕁麻疹と一部の血管性浮腫)では膨疹を誘発する直接的刺激を回避することがより大切であり、自発的に皮疹が現れる(特発性の蕁麻疹及び多くの血管性浮腫)では抗ヒスタミン薬を基本とする薬物療法が中心である。
©秀道広ほか:蕁麻疹診療ガイドライン2018. 日皮会誌. 128(12), 2503-2624, 2018
特発性の蕁麻疹の治療は、急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹に分けて考えます。
重症度に応じた治療選択と治療目標
抗ヒスタミン薬に抵抗する蕁麻疹の重症度と治療薬追加のめやす
©秀道広ほか:蕁麻疹診療ガイドライン2018. 日皮会誌. 128(12), 2503-2624, 2018
特発性の蕁麻疹の薬物治療手順
蕁麻疹診療ガイドライン2018
治療内容は、蕁麻疹の症状と効果に応じてステップアップし、症状軽減が見られれば原則として患者負担の高いものから順次減量、中止する
©秀道広ほか:蕁麻疹診療ガイドライン2018. 日皮会誌. 128(12), 2503-2624, 2018
特発性の蕁麻疹の治療手順
©秀道広ほか:蕁麻疹診療ガイドライン2018. 日皮会誌. 128(12), 2503-2624, 2018